本シリーズは Patisco のデモアカウント「鼎立」を使っています。掲載している画面とデータはすべてシステム上で実際に操作して生まれたもので、買い手とサプライヤーのやり取りも含め、作り物の画面ではありません。人物と会話は演出で、イラストはイメージです。画面はシステムの中国語表示のものですが、Patisco は日本語でもご利用いただけます。
まずは鼎立のご紹介
鼎立(ディンリー)自転車部品は、台中・大甲にある会社です。以後「鼎立」と呼びます。工場とオフィスを合わせて二十五人。
奥には小さな組立ラインがあり、仕入れた部品をセットに組んで梱包します。手前の営業チームは、そのセットと、ほかの部品メーカーから仕入れたチェーンやクランクを、ドイツの代理店、アメリカの流通チャネル、そして東京のなかなか目の厳しい自転車店に販売しています。
台湾には、こういう会社がたくさんあります。大きくはありませんが、何でもやらなければなりません。商社のように海外のお客さんの面倒を見ながら、工場のように部品を追いかけ、組立の段取りも組みます。
四人の登場人物
林社長は二代目です。父親から会社を継いで、もう二十年あまり。毎朝いちばんの仕事は、台湾の高山茶を一杯いれること。注文が取れないのは怖くないそうです。怖いのは二つ。受けた注文を納められないこと、そして阿哲がある日休んだときに、ドイツの案件がどこまで進んでいるのか誰もわからないことです。
阿哲(アージャー)は営業です。ひとりで十数社の海外顧客を担当していて、弁当はいつもキーボードの横で冷めていきます。口ぐせは「確認して、すぐ折り返します」。このセリフを一日におよそ四十回言っています。
阿美(アーメイ)は購買と生産管理を兼ねています。組立ラインに何が足りないか、どの部品メーカーがいつ納品するか。すべては彼女のスマホと、表紙がすり切れて白くなった一冊のノートの中にあります。どの部品メーカーの営業担当とも LINE の友だちで、何人かとは花の写真つきの「おはよう画像」(台湾の LINE の定番です)まで送り合っています。
秀琴さんは経理です。とても優しい人で、毎月最後の一週間になると決まって誰かの席の横に現れ、穏やかにこう尋ねます。「この請求書、どの注文のものかしら?」
データはどこにある?
林社長に聞いてみました。「会社のデータは、どこに置いてあるんですか?」
社長はお茶をひと口飲んで、少し考えました。

| データ | 置き場所 |
|---|---|
| 製品の仕様と写真 | 阿哲のパソコン、阿美のパソコン、それと三年前にカタログを作ったデザイン会社 |
| 顧客ごとの価格 | Excel が一つ。正確には三つ。バージョンが三つあるので |
| お客さんの問い合わせ、注文変更 | 阿哲のメールボックス |
| 部品メーカーと決めた納期 | 阿美の LINE |
| 出荷書類 | 共有フォルダ。ファイル名は「PI_最新_本当に最新_今度こそ本当.xlsx」 |
みんな一生懸命で、仕事もできます。問題は人ではありません。データが一人ひとりのところに散らばっていて、何をするにもまず「ちょっと聞く」ことから始まる点にあります。
一回聞くだけなら、すぐです。でも一件の注文が見積の問い合わせから出荷に至るまでには、おそらく百回以上聞くことになります。
林社長は、この感覚をよく知っていると言います。会社を継いだばかりのころ、ヨーロッパの自転車店を一軒ずつ回っていました。いちばん怖かったのは断られることではありません。その場でお客さんに質問されて、「持ち帰って調べます」と答えるしかないことでした。その「持ち帰って調べます」のところで、商売が逃げていくことがよくあったのです。
これからの物語
これから、鼎立のありのままの日々を一緒にたどっていきます。製品の整理、価格づくり、展示会の準備、ブースでの値下げ交渉、顧客やサプライヤーへの訪問、納期の催促、検品、出荷。そして最後には、産休に入る人も出てきます。
毎回、まず「以前のやり方」を演じてから、Patisco ではどの往復がなくなるのかを見ていきます。貿易の経験がなくても大丈夫です。カタログ、見積書、プロフォーマインボイスなど、物語に初めて登場する書類は、それが何で、なぜ必要なのかをそのつど説明します。
ひとつ、先にはっきりさせておきます。Patisco が扱うのは会社の対外的なこと、つまり顧客やサプライヤーとの間の製品、書類、出荷、やり取りです。組立ラインの段取りや倉庫の管理は、鼎立のこれまでのやり方のままです。

社長へのひとこと:データが一人ひとりに散らばっていると、会社は「いちばん忙しい人」と同じ速さでしか走れません。貿易の瞬間 #1|いちばん揃った製品データは、なぜか顧客のサイトにあった月曜の朝 8 時 40 分、阿哲がメールを開きます。ドイツの Jonas から夜中に届いた一通。「最新のカタログをもらえますか?」阿哲は少し考えました。最新の写真って、どのパソコンにあるんだっけ?
