本シリーズは Patisco のデモアカウント「鼎立」を使っています。掲載している画面とデータはすべてシステム上で実際に操作して生まれたもので、買い手とサプライヤーのやり取りも含め、作り物の画面ではありません。人物と会話は演出で、イラストはイメージです。画面はシステムの中国語表示のものですが、Patisco は日本語でもご利用いただけます。
物語の時間:展示会が終わって最初の火曜日、朝 8 時 50 分
土曜の夜のホテル
この話は、土曜の夜から始まります。
ポーランドのある代理店の購買担当 Marta が、展示会の最終日に鼎立のブースの前を通りかかりました。足は止めませんでした。阿哲は Jonas と話していて、Marta に気づいてもいません。Marta はテーブルから名刺を一枚取っただけです。
夜、ホテルに戻った Marta は名刺を裏返し、あの QR コードをスキャンしました。
スマホに開いたのは、鼎立の「展示会サンプル」カタログです。写真、品番、仕様。価格は出ていません。二十分ほど眺めて、四品目をカートに入れ、見積を依頼しました。それからページ上部の〔会員登録〕を押し、会社情報を記入して、申請を送信しました。
その間、メールは一通も書いていません。
以前のやり方
以前なら、この話はこうなっていたでしょう。
展示会から戻った阿哲が、名刺の情報を一枚ずつ Excel に書き写します。それから営業メールを書き、12MB のカタログ PDF を添付します。
半分はメールが相手の受信箱の手前で止められます。残りの半分は、開いたお客さんが「Please send price list」と返してきます。価格表を送ると、次は「What is your MOQ?」、その次は「Do you have it in black?」。三往復して一週間が過ぎ、阿哲には相手が本当に何をほしいのか、まだわかりません。
では Marta は? 以前の鼎立は、その存在すら知らなかったはずです。名刺を持ち帰り、ホテルでぱらぱらと見て、それでおしまいです。
Patisco でのやり方
営業メールに、もう PDF は添付しない
今、阿哲が書く営業メールはとても短いものです。
Dear Mr. Novák, thank you for visiting us at the show. Here are the cassettes and chains you asked about, with specs and photos: [link]
リンクを開くと、ヨーロッパのお客さん向けのあの公開ページです。英語、ユーロ価格で、登録は不要です。お客さんは好きなだけ眺めて、気になるものがあればそのままカートに入れて見積を依頼できます。阿哲が相手のほしいものを推測する必要はありません。自分から言ってくれるのですから。
添付ファイルがなければ、サイズが大きすぎて止められることもありません。お客さんが開いて見るのは、いつでも今日のデータです。
QR コードをスキャンした人は、自分で入ってくる
火曜の朝、阿哲が Patisco を開くと、Marta が残した二つのものがありました。
買い手の申請が一件。 Marta は〔会員登録〕を押したあと、会社名、国、住所、電話番号、メールアドレスを申請フォームに記入しています。鼎立の側では、Marta は「非招待」の販売先として一件入っています。

阿哲は会社情報に目を通し、相手のサイトも確認して、本物の代理店だと確かめてから招待を送りました。Marta が招待を承認すれば、ログインして、鼎立が共有したカタログを見られるようになります。
「スキャンしただけで自動的に会員になるわけじゃないんだ?」と阿美。
「違うよ。記入したのは本人だけど、取引するかどうかを決めるのはうちだから。」と阿哲。「それでも、名刺を自分で書き写すよりずっといい。税番号まで入れてくれてるんだから。」
見積書が一枚。 Marta が送った見積依頼は、鼎立の側では品目と数量が入った見積書になっていました。

書類ミニ講座|見積書(Quotation):売り手が買い手に返す書類で、各品目の価格、最低購入数量、納期、価格の有効期限を明記します。買い手はこれで比較をしたり、上司に予算を申請したりします。見積書はまだ成約ではありませんが、ここに書いた条件は、話がまとまればプロフォーマインボイスの内容になります。
阿哲は価格を入力し、PDF でダウンロードして、メールで Marta に送りました。ここは自分で送る必要があります。システムが代わりに見積を送ることはありませんし、Marta にも見積依頼の確認メールは届きません。そこで阿哲はひとこと添えました。「We received your inquiry on Saturday. Here is our quotation.」
十分後、Marta から返信がありました。「That was fast.」(早かったですね)
実はちっとも早くありません。依頼があったのは土曜です。ただ以前の鼎立なら、依頼があったことすら知らなかったでしょう。

以前 vs Patisco なら
| 以前 | Patisco なら | |
|---|---|---|
| 営業メール | 12MB の PDF を添付し、半分は止められる | 公開ページのリンクを付け、開けば今日のデータが見られる |
| お客さんの情報 | 営業が名刺を書き写す | お客さんが申請時に自分で記入する |
| お客さんがほしいもの | 三往復してもまだ推測 | お客さんが自分でカートに入れ、届いたときには見積書になっている |
| 名刺を持ち帰っただけで声をかけてこない人 | 存在を知らない | スキャンして見積を依頼してくれれば、鼎立にも見える |
社長へのひとこと:Patisco がお客さんを探してくれるわけではありません。ただ、お客さんが訪ねてきたときに、受け止められます。
この回の背景:同じ Gartner の 2025 年の調査では、買い手の 73% が、関係のない売り込みを送ってくるサプライヤーを積極的に避けるという結果も出ています。営業メールは短く書いて、お客さんが本当に見る製品ページを付けるほうが、カタログ一式を添付するより役に立ちます。Gartner プレスリリース
貿易の瞬間 #8|メールボックスに届く注文その火曜日、阿哲の受信箱にはまだ 63 通の未読がありました。十数通には PDF が付いていて、英語のものもドイツ語のものもあります。そして東京の佐藤店長から届いた一通は、件名がたった二文字。「注文」。