貿易の瞬間 #7|向こうはとっくに、うちを見ていた

貿易の瞬間 #7|向こうはとっくに、うちを見ていた
本シリーズは Patisco のデモアカウント「鼎立」を使っています。掲載している画面とデータはすべてシステム上で実際に操作して生まれたもので、買い手とサプライヤーのやり取りも含め、作り物の画面ではありません。人物と会話は演出で、イラストはイメージです。画面はシステムの中国語表示のものですが、Patisco は日本語でもご利用いただけます。

物語の時間:展示会が終わって最初の火曜日、朝 8 時 50 分

土曜の夜のホテル

この話は、土曜の夜から始まります。

ポーランドのある代理店の購買担当 Marta が、展示会の最終日に鼎立のブースの前を通りかかりました。足は止めませんでした。阿哲は Jonas と話していて、Marta に気づいてもいません。Marta はテーブルから名刺を一枚取っただけです。

夜、ホテルに戻った Marta は名刺を裏返し、あの QR コードをスキャンしました。

スマホに開いたのは、鼎立の「展示会サンプル」カタログです。写真、品番、仕様。価格は出ていません。二十分ほど眺めて、四品目をカートに入れ、見積を依頼しました。それからページ上部の〔会員登録〕を押し、会社情報を記入して、申請を送信しました。

その間、メールは一通も書いていません。

以前のやり方

以前なら、この話はこうなっていたでしょう。

展示会から戻った阿哲が、名刺の情報を一枚ずつ Excel に書き写します。それから営業メールを書き、12MB のカタログ PDF を添付します。

半分はメールが相手の受信箱の手前で止められます。残りの半分は、開いたお客さんが「Please send price list」と返してきます。価格表を送ると、次は「What is your MOQ?」、その次は「Do you have it in black?」。三往復して一週間が過ぎ、阿哲には相手が本当に何をほしいのか、まだわかりません。

では Marta は? 以前の鼎立は、その存在すら知らなかったはずです。名刺を持ち帰り、ホテルでぱらぱらと見て、それでおしまいです。

Patisco でのやり方

営業メールに、もう PDF は添付しない

今、阿哲が書く営業メールはとても短いものです。

Dear Mr. Novák, thank you for visiting us at the show. Here are the cassettes and chains you asked about, with specs and photos: [link]

リンクを開くと、ヨーロッパのお客さん向けのあの公開ページです。英語、ユーロ価格で、登録は不要です。お客さんは好きなだけ眺めて、気になるものがあればそのままカートに入れて見積を依頼できます。阿哲が相手のほしいものを推測する必要はありません。自分から言ってくれるのですから。

添付ファイルがなければ、サイズが大きすぎて止められることもありません。お客さんが開いて見るのは、いつでも今日のデータです。

QR コードをスキャンした人は、自分で入ってくる

火曜の朝、阿哲が Patisco を開くと、Marta が残した二つのものがありました。

買い手の申請が一件。 Marta は〔会員登録〕を押したあと、会社名、国、住所、電話番号、メールアドレスを申請フォームに記入しています。鼎立の側では、Marta は「非招待」の販売先として一件入っています。

販売先管理:「非招待」の販売先が一件
お客さんが自分で記入した申請は、鼎立の側ではまだ招待していない販売先の一件になります。取引するかどうかは、あなたが決めます。

阿哲は会社情報に目を通し、相手のサイトも確認して、本物の代理店だと確かめてから招待を送りました。Marta が招待を承認すれば、ログインして、鼎立が共有したカタログを見られるようになります。

「スキャンしただけで自動的に会員になるわけじゃないんだ?」と阿美。

「違うよ。記入したのは本人だけど、取引するかどうかを決めるのはうちだから。」と阿哲。「それでも、名刺を自分で書き写すよりずっといい。税番号まで入れてくれてるんだから。」

見積書が一枚。 Marta が送った見積依頼は、鼎立の側では品目と数量が入った見積書になっていました。

訪問者の見積依頼から作られた見積書
お客さんが公開ページで送った見積依頼は、鼎立の側では見積書になり、品目と数量が入っています。
書類ミニ講座|見積書(Quotation):売り手が買い手に返す書類で、各品目の価格、最低購入数量、納期、価格の有効期限を明記します。買い手はこれで比較をしたり、上司に予算を申請したりします。見積書はまだ成約ではありませんが、ここに書いた条件は、話がまとまればプロフォーマインボイスの内容になります。

阿哲は価格を入力し、PDF でダウンロードして、メールで Marta に送りました。ここは自分で送る必要があります。システムが代わりに見積を送ることはありませんし、Marta にも見積依頼の確認メールは届きません。そこで阿哲はひとこと添えました。「We received your inquiry on Saturday. Here is our quotation.」

十分後、Marta から返信がありました。「That was fast.」(早かったですね)

実はちっとも早くありません。依頼があったのは土曜です。ただ以前の鼎立なら、依頼があったことすら知らなかったでしょう。

以前 vs Patisco なら

以前Patisco なら
営業メール12MB の PDF を添付し、半分は止められる公開ページのリンクを付け、開けば今日のデータが見られる
お客さんの情報営業が名刺を書き写すお客さんが申請時に自分で記入する
お客さんがほしいもの三往復してもまだ推測お客さんが自分でカートに入れ、届いたときには見積書になっている
名刺を持ち帰っただけで声をかけてこない人存在を知らないスキャンして見積を依頼してくれれば、鼎立にも見える
社長へのひとこと:Patisco がお客さんを探してくれるわけではありません。ただ、お客さんが訪ねてきたときに、受け止められます。

この回の背景:同じ Gartner の 2025 年の調査では、買い手の 73% が、関係のない売り込みを送ってくるサプライヤーを積極的に避けるという結果も出ています。営業メールは短く書いて、お客さんが本当に見る製品ページを付けるほうが、カタログ一式を添付するより役に立ちます。Gartner プレスリリース

次回貿易の瞬間 #8|メールボックスに届く注文その火曜日、阿哲の受信箱にはまだ 63 通の未読がありました。十数通には PDF が付いていて、英語のものもドイツ語のものもあります。そして東京の佐藤店長から届いた一通は、件名がたった二文字。「注文」。次回を読む →
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