本シリーズは Patisco のデモアカウント「鼎立」を使っています。掲載している画面とデータはすべてシステム上で実際に操作して生まれたもので、買い手とサプライヤーのやり取りも含め、作り物の画面ではありません。人物と会話は演出で、イラストはイメージです。画面はシステムの中国語表示のものですが、Patisco は日本語でもご利用いただけます。
物語の時間:展示会が終わって最初の木曜日、朝 7:40
増えた 1 行
Jonas はすでに鼎立の招待を受け入れていて、自分のアカウントを持っています。メールの返信はせず、手元の PI を直接修正して、送信してきました。
数量が変わったのは、阿哲(アージャー)も予想していました。1 行増えたのは BB(ボトムブラケット)のセットで、「ついでに」とのこと。ところが単価の欄を長いこと眺めていると、どうも何かがおかしいのです。
ようやく見つけました。チェーンの単価が 0.3 下がっています。
打ち間違いではありません。Jonas が数量を直すついでに 1 か所変えて、何も言わなかったのです。
阿哲はディスカッションで尋ねました。Jonas の答えは「You said it was OK at the fair.」。
展示会のブースで阿哲が言ったのは「same price as last year」です。そこは間違いありません。
以前のやり方
こういうことは、以前は目で探すしかありませんでした。お客さんが前の版の PDF や Excel をコピーして、修正して送り返してくるのです。
阿哲は、自分が送ったものとお客さんが返してきたものを並べて、1 行ずつ確認します。一度確認したら、もう一度。見つけたら、そこから言い合いが始まります。「いいって言いましたよね?」「言ってませんよ」。お互いにメールや展示会のメモをひっくり返して、証拠を探すことになります。
見つけられなかったら? 出荷して照合する日になって、秀琴さんがチェーンの金額が足りないことに気づきます。そのころ貨物は、もう海の上です。
Patisco でのやり方
原本とコピー
まず、考え方を 1 つ。Patisco では、阿哲が発行した PI を原本と呼びます。Jonas の側に届くのは、自動で作られるコピーです。書類番号は同じですが、2 つはそれぞれ独立しています。Jonas が直すのは自分の分、阿哲が直すのは自分の分です。
Jonas がコピーを修正して〔送信〕を押すと、阿哲の側に見えるようになります。(お客さんがアカウントを持っていない場合は、#8 の代理作成コピーになります。相手が送ってきた原文のとおりに、こちらで控えを作るものです。)
書類ミニ講座|修正の記録:1 枚の書類が発行されてから確定するまでには、何度もやり取りが発生します。数量、単価、納期、品目。そのたびに誰が何をいつ変えたのか、それが修正の記録です。言い合いになったとき双方に必要なのは、声の大きさではなく、この記録です。
変わった箇所をそのまま示す
今回、Jonas はシステム上で修正しました。阿哲が PI-0411 を開くと、ヘッダーには〔こちらの返答待ち〕の表示。〔変更差分〕はオレンジ色に変わり、「相手側に変更あり、クリックして比較」と出ています。

開いてみると、左が Jonas が送信した時点の版、右が阿哲の側の版です。数量の変更、BB の追加行、チェーン単価のマイナス 0.3。3 か所すべてに印が付いています。PDF を並べる必要も、二度確認する必要もありません。

阿哲は 1 項目ずつ処理していきます。数量は〔相手側の値を採用〕。BB は〔追加を受け入れる〕。チェーンの単価は採用せず、元の価格のまま。そして〔送信〕を押し、ひと言添えました。「Chain price stays as agreed at the fair. Same price as last year.」
言い合いの前に、まず記録を
今回は展示会のメモをひっくり返す必要がありません。〈変更履歴〉に、すべての版が残っています。阿哲が最初に送信した v1 のチェーンは元の価格。Jonas が修正した版は、Jonas 自身が送信したものです。どの版も〔PDF をプレビュー〕で確認できます。
阿哲は長いメールを書きませんでした。ひと言返しただけで、Jonas もそれ以上は争いませんでした。
その日の午後、Jonas の側で〔確認する〕が押され、PI-0411 のヘッダーは〔双方確認済み〕に変わりました。
AI は何を手伝えるの?
会社で AI の設定をオンにしていれば、差分画面には〔AI 提案〕のボタンもあります。双方の違いを読み取って、「数量は受ける、値下げは受けない」といった返し方の方向を 3、4 通り示し、提案した数字を下書きに入れてくれます。
ただし、AI が入れるのは下書きだけです。代わりに送信することはありませんし、通貨、貿易条件、仕様を変えることもできません。〔送信〕を押すのは、必ず人です。

以前 vs Patisco
| 以前 | Patisco なら | |
|---|---|---|
| 相手が何を変えたか | PDF を 2 つ並べて 1 行ずつ確認 | 差分画面が変わった箇所を示す |
| どう返すか | 自分の Word を直して送り直す | 1 項目ずつ採用・不採用を決めて〔送信〕 |
| 「いいって言いましたよね?」 | メールやメモから証拠を探す | すべての版が変更履歴に残っている |
| 見つけられなかったら | 照合の日に発覚 | 変わった箇所は送信された時点で見える |
社長へのひとこと:以前の修正は根回し頼みで、誰が何に同意したかは記憶頼みでした。今は、修正のたびに 1 件の記録が残ります。
その日の夕方
一件落着。上機嫌の林社長は、みんなの分のドリンクをおごることにしました。台湾のオフィスでは定番の、ドリンクスタンドの共同注文です。
注文をまとめていた秀琴さんが、阿美(アーメイ)の席の横で足を止めました。「いつものでいい? 無糖、氷なし?」
「ホットにしようかな」と阿美。「お医者さんに、冷たいものは控えめにって言われてて」
秀琴さんはうなずいて、ごく自然に続けました。「そうだよね。予定日はいつだっけ?」
「5 月末です」
オフィスが 2 秒ほど静まり返りました。
阿哲が振り向きます。「……予定日って、何の?」
林社長の湯のみが、宙で止まりました。「阿美、それは……いつの話だ?」
阿美は男性 2 人を見て、秀琴さんを見て、ため息をつきました。「上着だって 2 枚重ねてるんですよ。本当に全然気づかなかったんですか?」
秀琴さんが阿哲の肩をぽんと叩きます。「Jonas の 0.3 には気づくのに、これには気づかないの?」
「あれはシステムが教えてくれたんですよ!」
