本シリーズは Patisco のデモアカウント「鼎立」を使っています。掲載している画面とデータはすべてシステム上で実際に操作して生まれたもので、買い手とサプライヤーのやり取りも含め、作り物の画面ではありません。人物と会話は演出で、イラストはイメージです。画面はシステムの中国語表示のものですが、Patisco は日本語でもご利用いただけます。
物語の時間:阿美の休暇前最後の週、水曜の午後
1冊のノート
阿美(アーメイ)は3か月の産休に入ります。手元には未完了の発注書が9枚、サプライヤーのグループが14個、そして表紙がすり切れて白くなったノートが1冊。
「引き継ぎの書類、作りますね」と阿美。
林社長は首を振りました。「まだ書かなくていい。先に、もう書かなくて済むものがどれか見てみよう」
以前のやり方
以前の引き継ぎといえば、Word の書類1本でした。
阿美は3晩かけて、頭の中のことを書き出していたはずです。どのサプライヤーの営業が誰か、どの注文の納期がいつか、誰とどんな条件を調整したか。どれだけ丁寧に書いても、書ききれません。いちばん大事なのはたいてい「あの時なぜそう決めたのか」で、それは本人の記憶と LINE の中にしかないからです。
休みに入って2週目には、きっと同僚から電話がかかってきます。「阿美さん、すみません、宏泰のあの注文なんですけど……」
後を引き受ける人は、ゼロから始めるのと同じことになります。
Patisco でのやり方
まず確認:もう会社にあるもの
林社長、阿美、阿哲(アージャー)の3人で座り、1つずつ見ていきます。
- 9枚の発注書:すべてシステムの中にあります。それぞれの品目、数量、価格、各版で何を変えたかは〈変更履歴〉にあります。
- サプライヤーと調整した条件:第12回で永錩精密鍛造と調整した3つの条件は、その発注書のディスカッションに書いてあります。
- 宏泰チェーンのグループ:記録係がいて、PI-0411 に紐づいています。めっきの設計変更も、検品写真も、「来週水曜納品」も、全部あります。
- 永錩、包装資材メーカーのグループ:こちらも紐づけ済みです。

阿美は見終えて、少し信じられない様子でした。「じゃあ私が書くのは……張さんの好きなお茶だけ?」
「それはやっぱり書いてくれ」と林社長。
次に補う:まだ会社に入っていないもの
もちろん、何もかもが自動でそこにあるわけではありません。3人は、休みに入る前に済ませることをリストにしました。
1. ディスカッションに入れていないメール:阿美は〔Email 受信トレイ〕で「振り分け待ち」のメールを、1通ずつ対応するディスカッションに入れます。入れていないメールは本人にしか見えず、管理者にも見えません。
2. 阿哲を自分のディスカッションに追加:進行中のディスカッションすべてに、阿哲を参加者として追加します。追加されれば、阿哲はそのスレッドのそれまでのメッセージをすべて見られます。
3. 窓口の付け替え:管理者が〔アカウント・権限管理〕で、宏泰や永錩といった売り手側の窓口を阿哲に付け替えます。一般社員には自分が窓口になっている取引先しか見えないので、これをしないと阿哲には見えないサプライヤーが出てきます。
4. サプライヤーにひとこと:各グループで「休みの間は阿哲にお願いします」と伝えます。グループはそのまま残り、記録もそのまま会社に入り続けます。
5. これから届くメール:休みの間に阿美のメールアドレスに届くメールは、ほかの人には見えません。そこで、よくやり取りするサプライヤーには、今後のメールを阿哲宛てにしてもらうよう頼みます。

この5つは、午後のうちに片づきました。3晩かけて Word を書く必要はありません。
ノート
最後に、阿美はあのノートを阿哲に渡しました。
「これ、あげる。中にちょっと……システムにないことが書いてあるから」
阿哲が最初のページを開くと、こう書いてありました。「張さん:烏龍茶、無糖。陳マネージャー:お茶は飲まない、コーヒー、砂糖2袋。永錩の応接室:エアコンがすごく寒い、上着を忘れずに」
阿哲は笑いました。「これは確かに、システムにないな」
以前 vs Patisco
| 以前 | Patisco なら | |
|---|---|---|
| 引き継ぎ書類 | 3晩かけて Word を1本 | 午後のうちにリストを片づける |
| 書類と変更の記録 | 引き継ぎ書類に書く(覚えていれば) | システムの中に、全部の版がある |
| サプライヤーと調整したこと | 本人の記憶と LINE の中 | 書類のディスカッションに書いてあり、グループには記録係がいる |
| 休みの間 | 同僚から電話が何度もかかる | 後を引き受けた人がその書類を開く |
社長へのひとこと:人は休みますし、離れることもあります。それは当たり前のことです。経験が会社に残っていれば、引き継ぎがゼロからになりません。貿易の瞬間 #21|新人の最初の1週間阿美が休みに入って最初の月曜、林社長が若者を1人連れて事務所に入ってきました。除隊したばかりで、坊主頭。パーカーの上にスーツのジャケットを羽織っています。「こちら、小宇(シャオユー)だ」と林社長。「阿哲、面倒を見てやってくれ」
